ごあいさつ

  心肺蘇生法教育の国際標準化、グローバル化に合致したプログラムの提供

日本蘇生協議会最高顧問
JCS-ITC コーディネーター
大阪青山大学健康科学部  野々木 宏

近年、医学教育と病院機能評価で国際標準化が求められています。

医学教育では、北米での臨床トレーニングを受けるための試験の受験資格として、国際基準に基づく医学教育分野別認証を受けている医学部出身者に限定することが公開されました。日本でも2015年春の認証評価機構設置に向けて準備がすすめられており、すべての大学医学部・医科大学が受審に向けた取り組みを始めています。

病院機能評価では、国際化のため国際的病院機能評価(Joint Commission International, JCI,以前はJCAHO)を受審する施設が増えてきました。JCIでは、完全性の確保や医療の質の向上に関する項目が多く、世界標準の厳しい運営管理が求められています。

その中で心肺蘇生法の教育は「スタッフの資格と教育」として、病院職員が全て習得すべき基本的な医療技術としてとらえられ、エビデンスの裏付け、評価の信頼性や妥当性が求められています。JCIでは、蘇生教育を繰り返し実施しその受講を示す必要があること、病院全体として心停止・呼吸停止後直ちに一次救命処置が行われ5分以内に二次救命処置を行う必要があることが規定されています。従って、世界標準の医療従事者向けコースであり、国際ライセンスのプロバイダーカードが発行され、2年ごとの更新を実施しているAHA(米国心臓協会)のBLS(一次救命処置)やACLS(二次救命処置)が本規定に対応する蘇生教育と考えます。

日本循環器学会では、国際標準の心肺蘇生法コースとしてAHAコースを2003年から導入し、国際トレーニングセンターとして契約を結び、会員のみならず広く医療従事者、更には一般市民への蘇生教育を行っています。 日本人の死因はがんに次いで心疾患が二位であり、脳卒中とあわせると循環器疾患として、がんとほぼ同じ死亡数となります。年間13万人の院外心停止のうち約6割が心臓性と考えられ、対策として、疾病予防や心停止予防、更にはBLS、ACLS、心拍再開後ケアの普及啓発が必要です。これには、地域における一般市民と医療従事者との連携、が重要であると考えます。一般市民へのAED使用が解禁されて10年となりますが、一般市民のAED適用はまだ低率で有り、その普及に向けて日本循環器学会では市民向けにハートセイバーコース・ファミリーアンドフレンズコースを開催しています。

2007年より日本循環器学会 専門医資格を取得するにはAHA ACLSプロバイダーコースの取得が必要と定められています。これは取りも直さず、院外、院内での救急救命に循環器専門医がリーダーシップを発揮してもらいたいとの期待を表しています。BLS、ACLSのトレーニングには繰り返す実技実習による習得や振り返りが重要であり、そのため基本的なBLSプロバイダーコースに1日、ACLSプロバイダーコースの受講に2日間と十分な時間を確保し、更に上級者コースとしてACLS EP(experienced provider)コースを1日コースとして開催しています。全てのコースに合計4日間を必要とすることで他の心肺蘇生法コースよりも長時間のコースとなりますが、救命には質の高いBLSを実践しながら、循環器医がチームリーダーとなり心停止の予防や治療、また鑑別診断と治療方法を学ぶことが重要と考えています。また指導者であるインストラクターには、標準的な質を保ち、適切な指導方法を習得するため、それぞれのインストラクターコースを準備して、国際的に標準的な指導内容の質を維持しています。日本循環器学会はこのようなAHAの長年のエビデンスに基づいた指導方法と地域を究極のCCUにするという理念に賛同して、AHAとの交流や国際蘇生連絡委員会(ILCOR)によるガイドライン勧告の作成に参加し、グローバル化に対応しています。

JCIが病院職員に一次救命トレーニングコースの受講・医師に二次救命トレーニングコースの受講を必要としているのは、実技の質を保ちこの実践的なトレーニング経験により院内での急変例に対応し、病院内の安全を確保するという考えに他なりません。

医学教育と病院機能評価のグローバルスタンダードを求めるために、国際標準的な心肺蘇生トレーニングであるAHA-BLS、ACLSの活用は効果的で有り、日本循環器学会は今後も広くコース提供を継続致します。皆様方のご活用とご支援をよろしくお願い致します。

心肺蘇生法コースのご案内

主に一般市民向けの心肺蘇生法コースです。心肺蘇生の方法、AEDの使用方法などを学びます。(ただしコースにより若干内容が異なります。)
修了証が発行されます

主に医療従事者向けの一次救命処置法コースです。成人・小児・乳児の心肺蘇生法、AEDに操作方法、窒息の解除などを学習します。
修了証が発行されます。

医療従事者向けの二次救命処置法コースです。心室細動・無脈性心室頻拍・心静止・PEAへの対処方法、徐脈および頻脈への対応、急性冠症候群、急性虚血性脳卒中などを学びます。
修了証が発行されます。

受講申し込み

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