RRS(迅速救急対応システム)について
AHAの心肺蘇生法コースは、いわゆる「心停止」に特化したコースであると思われがちですが、ACLSやACLS-EPコースの中では、 院内心停止(IHCA)を予防するための RRS(Rapid Response System, 迅速救急対応システム)についても学習します。
RRSでは、病棟の看護師や研修医が早期の容態の変化に気づき、RRT(Rapid Response Team)やMET(Medical Emergency Team)のような迅速対応チームへ連絡し、増悪を未然に予防することが推奨されています。 それには、容態の変化に気づく必要があり、AHAのACLSコースやACLS-EPコースでは主要な病態について各レベルでの気づきのトレーニングが含まれます。また迅速対応チームとしてのチーム医療もACLSコースやACLS-EPコースで学ぶことができます。また基本的な蘇生のトレーニングとしてBLSコースがあり、全ての年齢層に対する一次救命処置を学ぶことができます。
【院内心停止における救命の連鎖】
(American Heart Association 心肺蘇生と救急心血管治療のための ガイドライン2020 より引用
院内心停止の救命の連鎖の最初の輪は 「心停止の予防」です。急速に状態が悪化しつつある患者を特定し、心停止に至らないよう迅速に対応する必要があります。そのために病院内で組織横断的に活動するチームを組むことが求められています。
昨今このRRSが注目を集めており、厚生労働省も2022年の診療報酬改定で新設された「A200-2 急性期充実体制加算」のなかで、「入院患者の病状の急変の兆候を捉えて対応する体制」としてこのRRSを施設基準の要件の一つに加えました。(※詳細は厚生労働省等のホームページなどでご確認ください。)
患者の状態悪化を特定し、院内心停止に至らないよう早期介入するためのチームをRapid Response Team(RRT)あるいはMedical Emergency Team(MET)と呼びます。
これらのチームには医師や看護師などで構成されます。
- Rapid Response Team (RRT)
- Medical Emergency Team (MET)
RRTやMETは現場の要請を受け、悪化しつつあると懸念された患者の診察を行い、薬物療法などをはじめとした適切な治療を開始し、急変を予防します。
このようにRRTやMETによる介入が開始されるには、日々患者に対応している現場のスタッフの気づきが大切です。以下にRRTやMETを起動するための目安を示します。
- ・気道に問題がある。
- ・呼吸数が6回/分未満または30回/分を超える。
- ・収縮機血圧が<90mmHg。
- ・症候性高血圧
- ・予期せぬ意識レベルの低下
- ・原因不明の興奮
- ・痙攣
- ・尿量の有意な低下
- ・患者に対する直感的な懸念
AHA ACLSコースでは心停止に陥りがちな徐脈や頻脈(安定・不安定)にくわえて、急性冠症候群や虚血性脳卒中についても学習します。これにより心停止になる前に臨床的兆候を早期発見する能力が身につき、生存転帰を向上させることが期待できます。
またAELS-EPコースでは、さらに以下のものを学習しますので、幅広く心停止の予防に対応する能力が身につきます。
- ・中毒によるエマージェンシー
- ・致死的な電解質異常と酸塩基平衡異常
- ・喘息に関連した心停止
- ・アナフィラキシーに関連した心停止
- ・妊娠に関連した心停止
- ・溺水
- ・外相に関連した心停止
- ・偶発低体温患者と雪崩被害者における心停止
- ・感電と落雷に関連した心停止
- ・心臓手術に関連した心停止